いますぐ家族で取り組もう!大人と子どもの肥満対策

大人の肥満やメタボリックシンドロームの予防の重要性は誰もが知るところ。
けれど、近年は子どもの肥満も問題になりつつあります。
そこで、家族みんなでできる肥満対策を実践しましょう。

CHECK 家族の生活習慣をチェックしてみよう

□ 食事の時間や1日の食事回数がバラバラだ
□ 家族そろって食事をとることが少ない
□ 揚げ物やマヨネーズが大好き
□ 食事の後のデザートが必須
□ おやつが常備されている
□ ファストフードを食べることが多い
□ 偏食が多い
□ 休みの日は外で遊ぶよりも家でゲームをすることが多い
□ 子どもは体育の時間が苦手、大人も運動はほとんどしない
□ お出掛けするときは、車で移動することが多い

チェックがついた項目は、家族みんなで見直しておきましょう。

STUDY 肥満傾向児の推移

(文部科学省 学校保健統計調査より作図)

いまから約30年前に比べると、食品の種類や量は増え、交通の便は良くなり、パソコンやゲームも普及。肥満傾向児が増えているのは、こういった生活の変化が影響しているのかもしれません。

増加する子どもの肥満

 メタボリックシンドロームに該当する、あるいは予備軍と考えられる人の数は、男女合わせて2000万人弱もいるといわれています。
 しかも近年は、大人だけでなく子どもの肥満やメタボリックシンドロームも増えているといわれます。ここ数年に限っていえば、肥満傾向児の出現率は全体的に減少傾向にあるようですが、30年ほど前に比べるとどの年齢においても確実に増加しています(上図参照)。
 なぜ、子どもの肥満が増加してきたのでしょうか。その理由として、まず、さまざまな食品を手軽に手に入れられるようになったことが挙げられるでしょう。それらのなかには糖分や脂肪分が多いものも多くあるからです。さらにたくさんの習いごとに通わなければならなかったり、家でゲームやテレビに夢中になったりすること、また防犯上の理由も含め、子どもたちが外で自由に体を動かす機会が減ってきたことも挙げられるでしょう。
 子どもの肥満は、成人肥満にそのままつながる確率が高く、大人と同じように糖尿病や高血圧、高脂血症といった生活習慣病を発症する場合もあり得るのです。
 そのため、これからの時代は大人と子どもが一緒に肥満予防、生活習慣病予防を心掛けることが大切です。

大人と子どもの肥満度の計算

 最初に、家族みんなで肥満度やメタボリックシンドロームをチェックできる下記の計算をしてみましょう。
 ちなみに、肥満とメタボリックシンドロームの違いを簡単に説明すると、肥満は余分な脂肪がたまり過ぎている状態。メタボリックシンドロームは、とくに内臓脂肪がたまり過ぎているうえに、生活習慣病を発症する可能性がある状態をいいます。そのため、肥満の状態のときに生活習慣を改善し、メタボリックシンドロームへ進行させないように努力することが必要になります。
 メタボリックシンドローム診断基準は、1年に1度の健康診断の結果などを参考にしてチェックしておきましょう。BMIは大人の肥満度を計算するもので、結果が25以上の場合が太りぎみ、あるいは肥満となります。最も病気になりづらい標準となる数値は22で、20未満はやせぎみ、あるいはやせ過ぎとなります。
 一方、子どもの肥満度を知るためには、カウプ指数やローレル指数という計算式を利用します。生後3カ月から5歳くらいまではカウプ指数を、6歳から17歳くらいまでの学童期にはローレル指数を用います。成長中の子どもたちの身長や体重はさまざまで個人差があるため、結果はあくまでも目安としてとらえましょう。
 そして、計算結果が肥満の数値に当てはまった場合は、早めに対策を始めましょう。どれにも当てはまらなかった場合でも、上記のチェックリストにチェックがついていたら、今後の健康状態に影響が出るかもしれません。改めて毎日の食生活や生活習慣を見直して健康維持を心掛けましょう。
 ただし、子どもの過度なダイエットは成長を妨げることもあるので注意が必要です。
肥満度をチェックしてみよう

※単位に注意して計算してください

【子ども】
●カウプ指数 (生後3ヵ月~5歳くらい)
体重(g)÷[身長(cm)×身長(cm)]×10=【  】
15未満やせぎみ
15~18普通
19以上太りぎみ
●ローレル指数 (6~17歳くらい)
体重(kg)÷[身長(cm)×身長(cm)×身長(cm)]×10,000,000=【  】
100~115未満やせぎみ
115~145未満普通
145~160未満太りぎみ
【大人】
●メタボリックシンドローム診断基準
ウエスト周囲径 男性85cm以上、女性90cm以上

下記の2項目以上に当てはまる
脂質異常  以下のいずれか、または両方
高トリグリセリド血症 150mg/dl以上
低HDLコレステロール血症 40mg/dl未満
血圧高値  以下のいずれか、または両方
最高血圧 130mmHg以上
最低血圧 85mmHg以上
高血糖
空腹時血糖値 110mg/dl以上

●BMI
体重(kg)÷[身長(m)×身長(m)]=【  】 (肥満 25以上)

カロリーと栄養を考えた食生活

 では、家族みんなでどんな対策をしていけばいいのでしょうか。最初に改善したいポイントが、肥満の大きな原因となる食生活。
 まずは、1日3度の食事を決まった時間にきちんと、とるように心掛けましょう。そのためには、朝食をしっかり食べられる時間に起きること、そして夕食を早めに食べることも大切になります。
 次に食事内容。1日に必要なエネルギーは、子どもの場合は下表の通りです。大人も年齢や身体活動レベルによって違いますが、男性で2500kcal前後、女性で2000kcal前後です。
1日に必要な子どものエネルギー (kcal/日)
男の子女の子
3~5歳13001250
6~7歳15501450
8~9歳18501700
10~11歳22502100
身体活動レベルⅡの場合(「日本人の食事摂取基準 2015年版」)

 一方で、お菓子や揚げ物などのカロリーが下図の通りです。
 たとえば、子どもがポテトチップスを1日に1袋食べてしまった場合、それだけで1日に必要なカロリーの3分の1くらいをとっていることになります。外食やおやつには気を配らなければなりません。
カロリーの目安 ハンバーガー(1個)…280kcal
フライドポテト(M)…450kcal
コーラ(M)…140kcal
ショートケーキ(1個)…450kcal
ロースカツ(肉90g)…510kcal
からあげ(2~3人前)…550kcal
とんこつラーメン…660kcal
ミートソーススパゲティ…590kcal
ポテトチップス(100g)…550kcal

 そこで、次のような行動からスタートしてみましょう。
□ 1日3食食べる
□ よくかんで食べる
□ 外食を減らす
□ 野菜を毎日食べる
□ 糖分や脂肪分が多いおやつを減らす
□ 食事の時間を決める
□ 1人ずつ盛りつける

 ちなみに、子どものおやつは昼食と夕食の間の1回にし、カルシウムやビタミン、鉄分など不足しがちな栄養素が含まれる食品を食べるようにしましょう。おすすめのおやつが小魚やフルーツ。野菜や果物などを混ぜたホットケーキやジュースなどを大人と子どもが一緒に手作りできれば、栄養面にも優れたおやつを楽しくいただくことができるでしょう。

体を動かす生活を習慣づける

 次に体を動かすこと。パソコンやゲームの普及、車社会などで、大人も子どもも外で動き回る機会は減っています。たとえばゲームに夢中になると、時間はどんどん過ぎていきます。すると、日中に外で体を動かさないどころか、夕食や就寝の時間まで遅くなり、その結果、起床時間が遅くなり、朝ごはんを抜いて……。しかも移動は車の中でお菓子を食べながら……、となれば体を動かさなくなる悪循環を招きます。そこで、少しでも体を動かすため、運動面では次のような行動からスタートしてみましょう。
□ ゲームやテレビの時間を決める
□ 自分のことは自分でする
□ 子どものお手伝いを決める
□ 休みの日には家族そろってお出掛けをする
□ お風呂上がりにはみんなでストレッチをする
□ 早寝早起きを心掛ける

 こういった行動を習慣づけるためには、まず大人の意識を変えることが大切です。当然のことながら、子ども自らが食生活や生活習慣を改善することは難しいからです。
 子どもたちが、好きなものをたくさん食べようとしたり、やりたいことばかりに夢中になったりするのは当たり前。乱れた生活習慣の結果、子どもが肥満になったのであれば、それは大人の責任といえるでしょう。
 家族で生活習慣のルールを決めて、そのルールを大人が率先して守る。そして、その生活リズムに子どもを巻き込むようにし、みんなで健康を維持できる生活を意識的に続けるように努力しましょう。