重要な働きをするたくさんのホルモン
私たちの体には100種類以上ものホルモンが存在するといわれ、それぞれ重要な働きをしています。たとえば、成長ホルモンやメラトニン、セロトニン、アドレナリン、ドーパミンなどは、誰もが一度は耳にしたことがあるホルモンでしょう。
メラトニンは質の良い睡眠をもたらし、幸せホルモンといわれるセロトニンは満足感や安心感などを促します。アドレナリンやドーパミンは集中力を高めるなどの働きをします。
そして、ホルモンのなかには、女性らしさや男性らしさを左右するものがあります。主に女性に関係するホルモンの代表がエストロゲンやプロゲステロン。主に男性に関係するホルモンの代表がテストステロンです。
エストロゲンは、排卵を促したり、子宮内膜を増やしたりし、体を妊娠しやすい状態にします。女性らしい美しさを作るのもエストロゲンです。
プロゲステロンは、受精卵を着床しやすくしたり、妊娠した場合に子宮を安定的に保つ働きをします。
テストステロンは、筋肉をつけたり、闘争心や決断力を高めたりし、男らしい体を作ります。
ホルモンバランスが崩れる理由
ところが、こういったホルモンはバランスを崩してしまうことがあります。たとえば、成長ホルモンは眠り始めて1~2時間経過したころに分泌し始めるといわれています。セロトニンは起床して光を浴びると分泌量が増加します。エストロゲンは生理が終わったころから分泌量が増え、プロゲステロンは排卵後に分泌量が増え、それぞれの役割を果たします。
このようにそれぞれに分泌する時間や時期があり、そのときにきちんと分泌されることで、体に必要な働きをしているのです。つまり、ホルモンバランスが崩れるということは、分泌が正しく行われなかったり、分泌量が少なかったりすることをいいます。
ホルモンバランスは、不規則な食生活や乱れた生活習慣、睡眠不足、ストレス、過剰なダイエット、閉経などさまざまなことが原因で崩れてしまいます。
更年期障害の原因と主な症状
ホルモンバランスが崩れると、さまざまな体調不良が生じます。とくに、女性はエストロゲンやプロゲステロンのバランスが崩れることで生理不順やPMS(月経前症候群)などが起こります。そして、年齢を重ねると気になる更年期障害は閉経に向かってそれらの分泌が少なくなる、主に50歳前後の女性に症状があらわれます。PMSも更年期障害もホルモンバランスが崩れることが原因で、似たような症状も見受けられます。更年期が近づくと、どちらの症状かはっきり分からないこともあるかもしれません。大きな違いは、PMSは生理が始まる前、2週間くらいの一時的な間に起こり、更年期障害は継続して起こることです。
しかし、最近では30代の女性でも、あるいは男性にも更年期障害のような症状が起こるといったことを耳にします。
若い年齢で更年期障害のような症状が起きることを若年性更年期障害(プレ更年期)といいます。更年期障害やPMSと同じようにホルモンバランスの崩れによって起こります。
更年期障害の主な症状 顔がほてる、のぼせる ホットフラッシュ
動悸がする
頭痛や肩こり、腰痛が起こる
睡眠不足が続く
体が冷える
汗を大量にかく スウェッティング
めまいや耳鳴りがする
意欲が低下する
イライラする
不安になる
男性更年期障害はLOH症候群ともいわれ、加齢によるホルモンバランスの崩れはもちろん、几帳面、まじめ、神経質といった性格の人に症状が起こりやすいともいわれています。
若年性更年期障害や男性更年期障害は、家事や育児、仕事などによる過度なストレスも大きな原因といわれています。
このように考えると、更年期障害はある一定の年齢の女性だけに限った問題ではないことも理解ができるでしょう。しかし、実際に更年期障害を経験するまでは、どんな症状が起こるのか分からず不安に思う人もいることでしょう。あるいは、自分の体の不調が更年期障害のせいなのかどうか悩んでいる人もいるかもしれません。
更年期障害は人によっていろいろな症状が起こりますが、主な症状は上記の通りです。事前に把握しておき、症状が出たときに慌てずに対処できるようにしておきましょう。
乗り越えるカギは〝手抜き〟生活
では、自分自身や自分の周りの人が更年期障害で悩んでいるとき、どのように対処していけばいいのでしょうか。まず、自分自身でするべきことは、次のようにメリハリのある生活を送ることです。
□ 早寝早起きを心掛ける
□ 3度の食事を規則正しくとる
□ 起きたら、まずカーテンを開ける
□ 朝と夜のストレッチを習慣化する
□ 日中はウォーキングや買い物に出掛ける
□ 家族や友人と楽しくおしゃべりをする
□ 趣味をみつける
□ 入浴はゆっくり湯船につかる
□ 夜は明かりを暗めにして、音楽を聞いたり読書をしたりする
このような生活は、女性ホルモンや男性ホルモンに限らず、さまざまなホルモンを正しく分泌することにつながります。
栄養面でいえば、女性ホルモンに関与している大豆イソフラボンや葉酸、男性ホルモンの生成に関与しているナイアシンやムチン、女性にも男性にもおすすめのビタミンEなどを試してみることもおすすめです。ストレスが多いと感じるならビタミンやミネラルを積極的にとるように心掛けましょう。
また、心理的な面が影響することも多いため、楽観的に物事を捉えてみることも対策のひとつです。「更年期障害は誰にでも起こり得ることだから仕方がない」「ちょっと体調が悪いから、家事はお休み」「この仕事は○○さんに任せよう」と、手を抜ける部分は手を抜いたり、人に任せられることは任せたりし、ポジティブに過ごすことで少しは楽になるかもしれません。
そして、自分ではなく周囲の人が更年期障害に悩まされているときには、仕事や家事のサポートをしたり、ウォーキングや買い物など一緒に体を動かす機会を作ったり、あるいはマッサージやストレッチなどを手伝ってあげるなどして、本人がリラックスできるような環境を整えてあげましょう。
ただし、更年期障害は個人差が大きく、更年期障害だと思い込んでいた症状がもしかしたら違う病気が原因の場合もあります。あまりに症状がひどい場合には、きちんと診察を受けることが大切です。
更年期障害に限らず、また女性、男性、年齢などに関係なく、体内のさまざまなホルモンバランスが整う生活をめざして元気な毎日を送りましょう。