豊かな心とリズムある生活で腸内環境を整える

“腸活”や“菌活”という言葉をよく耳にするようになりました。腸内の環境が私たちの健康や美を大きく左右することへの関心が高まり、ひとつのブームになっているのでしょう。しかし、腸はずっと昔から同じ働きをし、これからもそれは変わりません。つまり、本当の健康や美を手に入れようと考えるなら、今のこのブームを一時的なものにするのではなく、腸に良い生活を長く自然に持続しなければなりません。そこで今回は、腸の働きと健康な腸を維持する方法をご紹介します。

健康と美を左右する理由

 腸の働きとして一番に思い浮かぶのが消化です。食べたモノから栄養を吸収し、それらを細かくし、体外へ排出します。しかし、腸はほかにも重要な働きを持っています。
 ひとつが免疫防御。実は腸内には、体全体の約70%もの免疫細胞が存在しています。有害なモノが入ってこないように常に働いているのです。
 もうひとつが解毒。解毒というと肝臓の働きとしてよく知られていますが、腸は肝臓よりも先に解毒作用を行っています。
 このような働きを腸がきちんと行うために、理想的な腸内環境を手に入れる必要があるのです。
 では、理想的な腸内環境とはどのような状態をいうのでしょうか。
 そのひとつとして挙げられるのが、腸内に存在する善玉菌、悪玉菌、日和見菌という3つの菌のバランスを2:1:7に保つことです。
 善玉菌とはその名の通り、腸内を健康に保つ働きをする菌です。悪玉菌はその逆。そして日和見菌は、善玉菌と悪玉菌の優位な方に変化します。つまり、日和見菌をいかに味方につけるかが腸内環境を整えるための大きなポイントになります。
 日和見菌を味方につけて善玉菌が増えれば、消化や吸収がスムーズに行われ、不要なモノをきちんと体外に排出できます。その結果、毎日の快適なお通じやきれいな肌を保つことができるのです。さらに、免疫力や解毒作用を高めることもできるため、病気になりにくく、元気な体を維持できるようになります。
 逆に悪玉菌が優勢になれば、体内に老廃物がたまり、便秘や肌荒れを起こし、おならや口のニオイにも悪影響を与えます。
 腸はこのようにさまざまな働きをしているのですから、“腸内環境を整える”ことをブームではなく、当たり前のこととして続けていかなければならないのです。

Column 腸内フローラってなに?
「フローラ」とは、お花畑や植物群などという意味を持っています。腸とお花畑は関係なさそうですが、実は腸内にはたくさんの菌が種類ごとに集まって存在しています。それが、まるでお花畑のように見えることから腸内フローラと呼ばれているのです。きれいなお花畑であることが元気な腸の証といえます。


善玉菌と悪玉菌と日和見菌のバランス

日和見菌は、善玉菌と悪玉菌の優勢な方に変化します。善玉菌が優勢なら腸内は健康を維持でき、悪玉菌が優勢になると便秘になったり肌が荒れたりと体調を崩してしまいます。


腸を整える食生活と過ごし方

 次に腸内環境を整える生活を維持するためにはどのようなことをすれば良いのでしょうか。
 食事の面からいえば、善玉菌を増やす食生活を心掛けることが大切です。
 善玉菌を増やす栄養素としてまず一番に挙げられるのが乳酸菌です。乳酸菌が多く含まれる食品は、ヨーグルトやバター、みそ、漬け物、しょうゆ、キムチなどです。ただし、乳酸菌は胃酸によって死んでしまうことがデメリット。そのため、乳酸菌が含まれる食品をこまめに食べる、あるいは胃酸が出やすい満腹時や空腹時から時間をずらして食べることがおすすめです。ちなみに、乳酸菌は200以上もの種類があり、人それぞれに相性が良い乳酸菌があるといわれています。自分に合った乳酸菌を見つけるためには、1週間程度続けて食べて、体調の変化を観察すると良いでしょう。
 次に、善玉菌のエサともいわれる栄養素が食物繊維です。食物繊維は、腸のぜん動運動も促すため、キャベツやバナナなど、食物繊維が多く含まれる食品を積極的にとり入れましょう。
 こういった食生活に加え、ストレスをためこまない“豊かな心”と“リズムある生活”も腸内の働きに影響を与えます。なぜなら、ストレスや不規則な生活習慣は、善玉菌を減少させ、腸のぜん動運動を鈍くしてしまうからです。楽しめる趣味を持ったり、好きな音楽を聞いたり、ストレッチを習慣化したり、十分な睡眠時間をとったりし、リズムある規則正しい生活習慣をめざしましょう。
 このようにして腸が喜ぶ食生活と生活習慣を毎日ずっと続けることこそが、本当に健康で美しい腸を維持することにつながるのではないでしょうか。

Column 腸におすすめの食材例
乳酸菌
ヨーグルト みそ 漬け物 納豆 チーズ
食物繊維
干ししいたけ きくらげ キャベツ ごぼう バナナ