ヨーロッパの洗濯事情
素敵な洋服が街を彩り、季節が変わるごとにクローゼットの洋服が増えていく──。なんでも簡単に手に入れられるようになった世の中では、衣類も少し古くなっただけですぐに処分してしまいがちです。しかし本来、自分の肌に触れるモノは、もっと丁寧に扱って、もっと長く持ち続けたいもの。そうすることは、経済的にも環境にもやさしい生活につなげることができるのです。そこで、質の良いものを長く愛用する習慣があるヨーロッパの洗濯事情からご紹介します。
まず、DIY精神が高く、環境先進国でもあるドイツ。多くの人がほとんどの衣類をクリーニング屋さんに任せることなく自分で洗濯します。環境に配慮した洗剤はもちろん、たとえシミがついてもきちんとケアできるアイテムがそろっているのです。また、歴史的建造物が多いフランス。都心ではその景観を壊さないよう、洗濯物を室外に干す様子は見られないといいます。ちなみにヨーロッパの国々では、衣類はもちろん、ハンカチや下着にもアイロンをかける人が多いことも特徴。これは、雑菌を防ぐ目的もあるようです。
このようにヨーロッパでは、まるで洗濯そのものが街や自然とともに歩んでいるようです。しかし、その洗濯環境は日本よりも厳しいもの。その大きな原因のひとつが水。ヨーロッパの水はカルシウムやマグネシウムなどを多く含む硬水。硬水は、洗剤の泡立ちを邪魔したり、配管をつまらせたりします。そこで、洗濯の水にお湯を使ったり、カルシウムが固まらないための防止剤を使用したりしています。
こういった事情もあり、ヨーロッパでは洗濯にかける時間や考え方が日本より少し進んでいるといえそうです。
洗濯アイテムの選び方と使い方
そこで、毎日の洗濯を見直すために、洗剤の種類や正しい使い方をきちんと知ることから始めましょう。まず洗剤について。洗濯洗剤は成分別に、石けん成分、植物由来成分、石油由来成分の3つの種類に大きく分けることができます。それぞれにメリットとデメリットはありますが、近年増えているのはやはり植物由来の洗剤。洗剤は、すすいだ後も衣類に少し残っているため、それが肌に刺激を与えることがあります。刺激を減らすためには、植物由来洗剤の使用がおすすめといえます。ただし、成分が天然でも合成でも「界面活性剤」と表記されているため、詳しい成分はメーカーのホームページを見るなどして、自分で調べることが大切です。
次に、多くの人が頭を抱える“シミ”。飲み物やソース、インクなどを衣類につけてしまった経験は誰もが持っているでしょう。そんなとき、慌てて水で塗らしたり、ティッシュでこすったりするのはNG。輪ジミになったり、時間が経って茶色くなったりするだけです。だからといって、クリーニング屋さんばかりに頼る必要はありません。シミの種類に合ったシミ取り剤で落ち着いてケアすればいいのです。
また、洗濯時の色移りも悩みの種。そもそも洗濯水そのものにも汚れは含まれていますし、多くの衣類に色や汚れはついています。そのため、洗濯を重ねるごとに衣類はくすんでいくのです。つまり、色落ちしやすい衣類にだけ注意を払うのではなく、いつもの洗濯にも色移りの原因があると考えましょう。そこで活躍するのが「色移り防止シート」。洗濯機に1枚入れるだけで、衣類への色移りを防いでくれます。
最後に、衣類をいつまでもきれいに保つために必ずチェックしたいのが、タグに表記される洗濯表示です。表示を理解せずに間違った洗濯をすると、当然のことながら生地を傷めてしまいます。日本では、2016年12月から洗濯表示が変更になります。これまで22種類だった表示が41種類に増え、より衣類に合った洗濯ができるようになります。
新しい形のライフスタイルを
植物由来の洗剤で肌へのダメージが少なくなったり、自分でシミを落とせたり、あるいは洗濯方法を変えるだけで買ったばかりのような状態が長く続いたりすれば、きっと洋服を着ることや洗濯することが今まで以上に楽しくなるはずです。経済的で環境への負荷を減らすこともできるのです。これからは、洗濯に対する考え方を少し変えてみて、今まで感じなかった新しい形の豊かなライフスタイルを手に入れてみませんか。
取材協力/e.oct、PADジャパン
新しい洗濯表示例
液温は30℃を限度とし、洗濯機で非常に弱い洗濯ができる |
液温は40℃を限度とし、手洗いができる |
塩素系及び酸素系の漂白剤を使用して漂白ができる |
タンブル乾燥ができる(排気温度上限80℃) |
つり干しがよい |
日陰の平干しがよい |
底面温度150℃を限度としてアイロン仕上げができる |
パークロロエチレン及び石油系溶剤によるドライクリーニングができる |
消費者庁ホームページより