慢性便秘症にお悩みの方は 医師の診療のもと、正しい治療を

国民の約3割が罹患しているといわれる慢性便秘症。まさに国民病といえますが、医療機関で治療を受けている人が少ないのが現状です。そこで今号では、誰もが知りたい身近な便秘の診療について、東京シーフォートスクエアクリニック院長、水城啓先生にうかがいました。


東京シーフォートスクエアクリニック
院長 水城 啓 先生

島根医科大学医学部医学科卒業。
ハワイ大学関連施設(クアキニ病院)、東京都済生会中央病院内科医長、けいゆう病院消化器内科部長を経て東京シーフォートスクエアクリニック開院。
慢性便秘症診療ガイドラインメンバー。

―どのような状態を便秘と呼ぶのでしょうか?

 毎日便が出ない=便秘と思われがちですが、便秘は排便回数とは関係ありません。2017年に日本消化器病学会から発刊された『慢性便秘症診療ガイドライン』では、便秘の定義を「本来体外に排出すべきふん便を十分量かつ快適に排出できない状態」としています。つまり、1週間に1回しか排便がない人でも、お腹の張りや残便感がなく、すっきりとしていれば便秘とは呼ばないのです。実際に、「自分は便が出ないから便秘だ」という人が病院でX線写真を撮ると、お腹にまったく便がなく、便秘ではなかったということも結構あります。

―便秘になりやすい年齢や性別はありますか? また便秘の種類について教えてください。

 慢性便秘症は年齢が上がるにつれて増加します。女性に多いイメージですが、60歳以上では男女差がなくなり、80歳では男性のほうが多くなります。
 便秘の種類については、慢性便秘症は次の3つのタイプに分類されています。①便が大腸から肛門まで便秘がない人と同じくらい早く移動するタイプ、②大腸から肛門まで便が移動するのが遅いタイプ、③便が直腸まで来ていても便意がなかったり排便ができないタイプ。単独ではなく、2つのタイプが合わさっていることも少なくありません。

―普段の生活で気を付けることはありますか?

 便秘の大きな原因は「ライフスタイル」にあるといわれています。ですから、生活習慣の見直しはとても大切。栄養バランスの良い食事や適度な運動を心掛けることは便秘の改善だけでなく再発予防にもつながります。
 食事については、慢性便秘症ではとくに「朝食」が重要とされています。国内の調査では、便秘のない人で朝食を食べない人は約20%だったのに対し、便秘の人は約30~50%と高率でした。ごはん(コメ)を食べる人は、あまり食べない人に比べて便秘が少ないというデータもあります。一方、よく噛んで食べる人(1回の咀嚼回数が30回以上)や1日1500ml以上の水分をとる人には快便が多く見られます。
 食物繊維も意識してとりたい栄養素ですが、便秘でお腹が張っているときに食物繊維を含む食品をたくさんとると、かえってお腹がふくれて苦しくなることがあるので注意が必要です。
 スムーズな排便のために、正しい排便姿勢も意識しましょう。ロダンの「考える人」のように、前かがみの姿勢をとると直腸がまっすぐになり、便が出やすくなります。

―便秘の治療薬について教えてください。

 日本では、これまで2種類の便秘薬しかありませんでした。ひとつは酸化マグネシウム、もうひとつは腸を刺激してぜん動運動を活発にし、排便を促すタイプの薬です。マグネシウム製剤は水分を分泌させて便をやわらかくすることで排便しやすくしますが、腎機能が低下した人や高齢者では中毒症状が出ることがあります。いずれも医師の診療のもとで正しく服薬してください。
 このほか、5年前には新薬が登場しました。便秘薬では実に30年ぶりのことです。その後も新しい薬が登場し、症状に合った薬が処方できるようになってきました。ところが日本人は、便秘になっても3割程度しか医療機関を受診していません。
 「便秘は命にかかわる病気ではない」と考えている人が多いのかもしれませんが、最近の海外の研究では「便秘のない人は便秘の人より長生きする」という興味深い報告もあります。実際、便秘だと思っていたら大腸がんなど恐ろしい病気がみつかることもあるので、自己診断は禁物です。便秘にお悩みの方は、ぜひ医療機関を受診して、適切な治療を受けてください。

地域の人々からビジネスマンまで。健康を「駅」で支えるお医者さん 羽田空港へのアクセス良好な天王洲アイル駅。「東京シーフォートスクエアクリニック」は、東京モノレール中央口直結という抜群の立地にあります。オープンは2018年秋。院長の水城先生がこの地で開院したのは、周辺にクリニックが少ないことが理由のひとつだったそう。その言葉通り、今では駅利用のビジネスマンをはじめ、地域の健康を守る「町のお医者さん」として信頼を集めています。また、大腸憩室疾患など専門医の知識を生かした診療を求め、遠くから通ってくる方も。患者さんのどんな質問にもかみ砕いて分かりやすく伝えるその姿勢からも、水城先生の誠実な人柄がうかがえます。 東京シーフォートスクエアクリニック TEL 03-6712-8018 [診療科目]内科、消化器内科、漢方内科
[診療時間]9:00~12:00(月~金)、14:00~19:00(月~水、金)
[休診日]木曜日午後、土曜日、日曜日、祝日
東京都品川区東品川2-3-10 シーフォートスクエア 2F 217
最寄り駅 東京モノレール 天王洲アイル駅(中央口直結)
     りんかい線 天王洲アイル駅(出口A)
URL http://tss.clinic/