胃がんの予防に役立つ 内視鏡による胃がん検診とピロリ菌のお話

「怖い」「苦しい」というイメージがつきまとう内視鏡検査。
しかし最近は技術や器具の性能も向上し、内視鏡によるがんの早期発見・治療ができるようになってきました。そこで今回は、内視鏡による胃がん検診や、胃がんの原因といわれるピロリ菌について、古市クリニックの古市庄二郎先生にうかがいました。


古市クリニック
院長 古市 庄二郎 先生

1984年 千葉大学医学部卒業
1992年 古市クリニック開院
趣味:登山、キャンプ、サッカー、囲碁、将棋

―内視鏡を使った胃がん検診について教えてください。

 胃がん検診はバリウムが主流ですが、より精度の高い方法として、内視鏡による胃がん検診が厚生労働省で認可されました。これを受け、世田谷区でも昨年から内視鏡による検診がスタートし、当院でも実施しています。
 しかし、内視鏡といえばつらい検査の代名詞。「胃カメラを飲むのは怖いから」と敬遠されがちですが、10年ほど前に鼻から入れる経鼻内視鏡が登場し、経口か経鼻かを患者さんが選べるようになっています。両方受けた方の8割は経鼻の方が楽だと言いますが、「どちらでもいい」と言う方には、経口を使っています。経口の方が大きいので、検査前に胃の掃除をする能力が高いことに加え、画素数の高いクリアな画像が撮れるというメリットもあります。

―胃がんの原因といわれるピロリ菌について教えてください。

 ピロリ菌は潰瘍や慢性委縮性胃炎、さらには胃がんになりやすいことが証明されています。実は、胃がんは東南アジアや東アジアに多く、欧米には少ない病気。その違いはどこから生まれるかというと、東南アジアや東アジアに、胃がんを引き起こしやすい型のピロリ菌が多いからです。欧米にもピロリ菌はいますが、型が異なります。

―ピロリ菌に感染する原因はなんでしょうか?

 0歳児の胃の中にピロリ菌はいないので、成長する過程で感染すると考えられます。ただ、よくいわれる「保菌している親が子どもに口移しで食べさせると感染する」とか「井戸水を飲んで育った世代は保菌率が高い」という話には、医学的・科学的な根拠はありません。ではなぜ「井戸水が怪しい」という話になったのかといえば、昔から上水道が発達していた欧米に対して、東南アジアや東アジアでは井戸水を使う地域が多いから。要するに衛生的でないという理由です。すべての井戸から水を採取して菌を調べるのは不可能ですから、証明する術がないのが現状ですが、井戸水で育った私にも実際にピロリ菌がいて、除菌した経験があります。そう考えると「井戸水が原因」という説も、単なる噂とは言い切れません。

―ピロリ菌の検査や除菌はどのような方法で行うのですか。

 保険適用でピロリ菌を見つける検査には6通りあり、内視鏡を使う方法と使わない方法があります。ピロリ菌が見つかった場合は、抗生剤を一週間飲んでもらい、その後、除菌できたかをチェックします。
 しかし、一回で除菌に成功する確率は70%、残り30%の方は完全には除菌できないのが現状です。その場合、抗生剤の種類を変えて二次除菌を行います。
 除菌の副作用として知られているのが、除菌後に逆流性食道炎を起こすケースがあることです。ピロリ菌による傷が緩和され、それまで抑えられていた胃酸の分泌量が増える(正常に戻る)ことがその理由ですが、症状は一時的な軽いものなので、心配する必要はありません。

―ピロリ菌がいるかどうかは、市区町村が行っている胃がん検診で調べてもらえますか?

 各自治体が実施している胃がん検診は、あくまで「がんの発見」が目的なので、残念ながらピロリ菌の有無まで調べることはできません。胃痛や腹痛などの不調がある方はクリニックを受診して、ピロリ菌の疑いがある場合は検査を受けることをおすすめします。菌が見つかれば、除菌も行ってもらえます。
 ただし、ピロリ菌を退治すれば安心というわけではありません。ピロリ菌に傷つけられた胃粘膜はがんになりやすいことが分かっていますので、除菌した後も、定期的に検診を受けることが大切です。検診を受け続けることが、がんの早期発見・治療につながります。

幅広い診療科目で患者さんと病院をつなぐ、頼もしい地域のかかりつけ医 東急大井町線等々力駅のホームの目の前に位置する古市クリニック。待合室をはじめ、院内には院長の古市庄二郎先生ご自身が撮影した自然の風景や花の写真があちこちに飾られ、やさしいぬくもりに包まれています。古市先生は消化器系が専門ですが、外科医の経験からケガの処置や小手術、放射線科、内科、さらに訪問診療も行っています。「町医者は、患者さんと専門の医療機関をつなぐ橋渡し役。だから専門にこだわらず、なんでも診たいんです」と古市先生。その誠実な姿勢が、地域に住む多くの患者さんから厚い信頼を集めています。 古市クリニック TEL 03-5706-6055 [診療科目]消化器科、内科、外科、放射線科
[診療時間]9:00~12:00、15:00~19:00(土曜日は9:00~12:00)
[休診日]木曜日、日曜日、祝日

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最寄り駅 東急大井町線 等々力駅 南口
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